オープンリーダーシップ戦略を考える

先週、少し話題にしました「オープンリーダーシップ」について、いろいろと反響をいただきました。
今週も、もうちょっと、そこを掘って見ようかと思います。

ソーシャルメディアの浸透によって、社員をコントロールすることが事実上困難になり、経営に「オープンリーダーシップ」を導入する必要が出てきていることは先週述べました。

これまで企業が世の中の人々に発するメッセージは、「さあ買おう」「さあ使おう」といったものが中心でした。社員には「この仕事をせよ」と命じ、取引先には「事細かな条件交渉」をすることこそがビジネスでした。
ただ、こういったことを追求していくと、結果としてどんどんと「その場限り」の「損得ずくめ」の「非人間的」な付き合いになっていきます。

企業はここに来て、パワーをもつようになった顧客や社員との「新しい関係」を考える必要が出てきているのです。それは、「誠実」「ふれあい」「絆」「共感」などの関係を構築するビジネスのあり方です。

シャーリーン・リー著の「OPEN LEADERSHIP」による、オープンリーダーシップの定義は、「謙虚に、かつ自信を追ってコントロールを手放すと同時に、コントロールを手放した相手から献身と責任感を引き出す能力を持つリーダーのあり方」ということです。

この場合のリーダー側から見る新しいルールは以下の5つです。
①顧客や社員が持つパワーを尊重する。
②絶えず(彼ら社員と)情報を共有して信頼関係を築く。
③(彼ら社員に)好奇心を持ち、(リーダー=経営側は)謙虚になる。
④(社員に)オープンであることに責任を持たせる。
⑤(社員に責任を持たせるからには)失敗を許す。

このルールを実践している最も有名な企業のひとつに、米国のオンライン・シューズショップ「Zappos(ザッポス)」があるでしょう。

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ザッポスは、オンライン・ショップではありますが、そのWEBサイトはコールセンターへの問い合わせを歓迎する作りになっています。
そして、そのコールセンターは、「マニュアルがない」ことで有名です。
電話に出た社員が、自分のキャラクターとモチベーションで、友達のように親身に対応してくれるのです。
まったく関係のない問い合わせ、たとえば「ピザが食べたいんだけど」という質問に対しても、「その近くだと、◯◯ピザがありますよ。電話番号は××・・・」と応えてくれるといいます。

そのオフィスは、上記のように社員の好き放題になっていますが、「クレイジーオフィス」と親しみを持って呼ばれています。社員は自己責任のもと、高いモチベーションで顧客との関係構築を実践しているのです。

これまでの企業経営は、決まったルールやブランドイメージを先に規定して、それに社員を従わせることでした。
しかし、ザッポスは、社員行動をオープンにし、その一人一人の個性の積み重ねが、社のブランドを築くという思想を採用しています。
これこそが、オープンリーダーシップ戦略のひとつの成功例でしょう。

さて、では、すでにいま活動している一般的な日本企業が、今さらどうやってオープン化を導入していくのでしょうか?
いや、これは、なかなか大変なことです。
経営の指標を、「売り」から「エンゲージメント」、つまり関係性の構築にシフトするとか、「顧客単価」を、「ライフタイムバリュー」という指標にシフトするとか。。。

この先は、僕の本業にも関わってきますし、なかなか一言では言えないのですが、どこまでをオープンにするかという度合いは、企業の業種や組織の大きさ、市場の環境によってさまざまです。決まった答えはありません。

ただここで言いたいのは、「オープンリーダーシップの導入」は、企業の経営側よりも、実際に日々、生活者、顧客と接している現場社員の方が、肌で必要性を感じているだろうということです。

ソーシャルメディアの活用を含めた社員の自由度を高めて、そのモチベーションを最大限に活かし、生活者や顧客との人間的で長期的な関係構築に踏み出すか?
それとも、社員の行動を規制し、幻想にすぎないコントロールにこだわり続けるか?

企業経営も、いよいよその判断が必要な時期にきているということでしょうか。

とにかく、経営、社員、そして何よりも、世の中の生活者にとって、より良い企業活動・サービスや商品提供のあり方が実現されることを望んでいる次第です。微力ながら。。。(^^;