コミュニケーションは、つながってからが本番

先週のエントリー「今までの広告のやり方を変えるってどういう意味?」に、すごくたくさんのアクセスをいただいき有り難うございました。
大学生向けの授業で話していることなので、同業の方には「何を今さら」感があったかもですが、もう少しその続きを考えてみたいと思います。

先週は、ソーシャルメディアの浸透が「お得意さんの顔」を見えるようにし、大量生産以前の「三河屋さん的商売」を高次元で復活させる、というような話をしました。
拙著「ロングエンゲージメント」で紹介した、米国の家電量販店ベストバイの「ツウェルプフォース」というツイッター施策なんかは、まさにこの良い事例ですよね。(最近、評判よくないようですけどね・・・)

いずれにしても、ソーシャルメディアでの物理的なつながりが可能になってくると、コミュニケーションの力点は、「単に伝える」から「関係構築」にシフトしていくということです。

関係構築を分解して考えると、「まず、つながる」と、「つながり続ける」という2つのフェーズがあると思います。

$京井良彦の3分間ビジネス・スクール-つながり

「まず、つながる」というのは、特にソーシャルメディア時代、生活者の「共感を獲得する」ことで実現していくものでしょう。
共感の獲得によって、「いいね!」を押してもらったり、フォローしてもらったり、企業にとって生活者との物理的つながりができるわけです。
とはいえ、これは、これまでの広告でも重要視されてきたことですね。

そして本当に大事なのは、そのあとの「つながり続ける」というフェーズ。
つまり、「つながってからが本番」だということ、要するにエンゲージメント施策です。

ところが、これが、なかなか広告の世界では理解されづらいところだなあと思っているところです。

でも、自分自身の友人関係を振り返れば分かりますよね。
一度、知り合いになったその後の付き合いこそが、友人の仲を築いていきます。
知り合った後に、深く付き合っていくことで、絆が強くなるということです。
コミュニケーションというのは、関係を深めてナンボということですね。

これまでの広告ビジネスどっぷりだと、このへんを飲み込むのが難しいようです。
派手な打ち上げ花火で注目を集めてナンボ。中には、一方的にマス広告を打ち続けることが、コミュニケーションであり、関係を深めることだと思っている人もいたりとか・・・。

つながり続けるコミュニケーションとは、決して派手なものではないですが、役に立つ情報をシェアしたり、困ったときの相談相手になったりという、日常的で人間的なものです。
広告というには、あまりに地味なものかもしれません。

この「広告」というビジネスが、どこまでを守備範囲とするかは大いに議論されているところでしょうが、「コミュニケーション」という領域をカバーするなら、こういった地味なエンゲージメント施策は無視できないんじゃないかなあと思うのです。それこそが本番なわけですから。

コミュニケーションというからには、企業と生活者のお互いにとって、有益な情報交換を実現させるべきでしょう。
だから、どちらかの一方的な情報発信では、ダメなんだと思います。

そこをうまくサポートして、お互いが欲する有益な情報をマッチングさせて、世の中をみんながハッピーと思える方向に向けていく。
そして、大量生産、大量消費、大量広告投下時代にはやむなしとしていたムダを減らし、地球上の有限な資源をみんなで効率的にシェアするようにサポートしていく。

それが、これからのコミュニケーション産業が根底に持つべき哲学なのかなあと思っているわけです。

もちろん自分自身の日常業務は、そんな想いを持ちつつも、いろんなしがらみの中で葛藤の連続なわけであり・・・
というか、それを棚に上げて書いているためか、だいぶ説教くさくなってきましたね。(^^;

では、今日はこのへんで。