人は、いかにして騙されるのか?

さて、今回も先週に引き続き、博報堂ブランドデザイン著の「ビジネス寓話50選」で紹介されていた話です。
1997年に、ネイサン・ゾナーくんという14歳の少年が書いたレポートが話題になったそうです。
彼は、DHMOという化学物質の害を指摘し、大人達の署名を集めました。

彼の主張するDHMOの危険性とは、
①酸性雨の主成分。温室効果を引き起こす。
②海難事故死の直接の死因になることが多い。
③植物が高レベルのDHMOにさらされると成長が阻害される。
④末期がんの腫瘍細胞に必ず含まれている。
⑤固体状態のDHMOに長時間触れると皮膚が損傷される。
などといったものです。
そして、この物質はアメリカ中の工場でなんの規制もなく使用され、排出されていて、結果として湖や川、人の母乳などにも高濃度のDHMOが検出されていると、ネイサンくんは訴えたといいます。

もうお気づきでしょうか?
DHMOとは、dihydrogen monoxideの略。
直訳は一酸化二水素、元素記号はH2O。
つまりただの水のことです。
あなたは、規制すべきという署名をしましたか?(笑

①から⑤にウソはひとつもありません。
実は、このレポートのタイトルは「我々はどのようにしてだまされるか?」というもの。
単なる水でも、恣意的に危険な言い方をすれば、いかにも危ない化学物質のように見えて規制の対象にさえなりかねないというのが、ネイサンくんの主張なのです。

このレポートは、広告に携わる者にとって、すごく考えさせられるものです。
要するに、広告というものは、ずっとこの逆をやってきたわけです。
もちろんウソはありませんが、恣意的にいいイメージをつくるという役割を果たしてきたのは事実でしょう。
でも、14歳の少年がつっこみを入れるのですから、こういうやり方は限界に来ているのかもしれません。

大事なのはやはり、ファクト。
水がキチンと水であることが、一番大切だと思うんです。
人は水がなければ、困ります。
それが、どんなこねくり回した言い方をされようと、水は必要なもの。
そんな人に必要とされるキチンとしたファクトを創ることが、大切なんだろうなと。
そういう意味で、これからの広告は、ファクト創りから入っていく必要があるんでしょうね。

もちろん、恣意的なイメージづくりは、広告だけの話じゃありません。
原発や消費税に関する意見、選挙を目前に控えた政治家の発言、国際問題の報道などなど、日本にもネイサンくんにつっこんでもらいたい情報が、わんさかありますよね。

ということで、今日はこのへんで(^^