1%の解のため99%のムダをやってみる

最近、仕事で本当に切に思うことがあります。
新しく出てきた課題に対して、検討を重ね、正論を積み上げて導きだしたソリューション。
それは、正解であっても、もう誰か他の人が手をつけていることが多いということ。
そんなスピード感じゃ、新たな価値を生み出せない時代になっていることを、身をもって感じることが多いのです。

先日、覆面ブロガーのちきりんさんが、プロゲーマーの梅原大吾さんにインタビューしたことが、話題になっていました。
梅原さんは、世界的に有名なプロの格闘ゲーマーですが、その著書で述べられていることは、示唆に富んでいます。

「普通、人はこっちの方向に何かあるはずだと当たりを付けて進むものだと思う。しかし、僕の場合は自分の足で全方向に歩くようにしている。正解がどちらのほうにあるのか、迷う必要さえない。すべての方向を探りつくすから、どこかで必ず正解が見つかるのだ」

もちろん、これはゲーム攻略の話ですが、前述の悩みを抱える僕にとっては、膝を打つほどのヒントになりました。

先日読んだ、木村健太郎さんの著書「ブレイクスルー、ひらめきはロジックから生まれる」には、「石割りの達人」という逸話が取り上げられていました。

これは、どんな石でも割ることができると評判の石工の話です。
人々は、「あいつは魔法のカナヅチを持っている」だの「石が割れる石の目というポイントを瞬時に見つける才能がある」だのいろんなうわさ話をしていました。
とうとう、ある若者がその石工を訪ねて「どうやったら石の目を見つけられるか秘訣を教えて下さい」と乞います。
しかし、石工の答えは意外なものでした。
「石の目などわからん」
「では、どうやって割っているのですか」と、若者。
「簡単じゃよ。あらゆる角度から叩いているだけじゃ。お前らは怠惰だ。そして理屈に縛られている。石の目を探して議論してばかりだから、いかん。上からダメなら下。右からダメなら左。大きなカナヅチでだめなら、小さなノミ。あらゆる角度から叩いてみる。それだけじゃ。そして、割れた後で初めて、そこが石の目だったと気づくんじゃ」

世の中、これだけ瞬時に情報が共有される環境になっています。
「このあたりに正解がありそうだ」と、当たりを付けて時間をかけて、検証を進めて正解にたどり着いたとしても、そんなことはもうとっくに誰かが気づいて、実行に移されている可能性が高いわけです。
逆に、誰もが正解だと考えないような場所にこそ、これまでにない新たな価値=ブレイクスルーが眠っている可能性があります。

ただ、なまじビジネス的な常識をもってしまうと、やみくもに全方位的にアプローチすることは、ムダが多く非効率的だと考えてしまいます。
しかし実は、自然界にはこういったムダが溢れています。

マグロは一回の産卵で1000万個の卵を産みますが、そのうち成体になるものは10匹だと言われます。
タンポポの種子も、ほとんどは舗装された道路に落ちて実を結ぶことはありません。
でも、よりよい命を残すために他の命をムダにするのは自然の法則なのです。

デジタル時代に、イノベーションを求める仕事も同じでしょう。
あらゆる処理が効率化できるからこそ、アイデアによるブレークスルーを見出すためには、99%がムダになることを承知で、すべてのことを試してみるべきだと思うのです。

ということで、とやかく言って悩んでる暇があったら、とにかく考えられることを全部やってみましょう。
今日は、このへんでー(^^