先週の記事、「オーケストラ型組織からジャズ型組織の時代へ」は、たくさんの方に読んでいただいたようで、延べ1万を超えるページビューをいただきました。有り難うございました。
今回、日本企業の取り組み事例を考えようと思ったのですが、やっぱりそのまえに、もう一度この現象を個人にフォーカスしてみてみたいなあと思いました。
ということで、まず、社会・経済におけるパワーの源泉をおさらいしてみましょう。
これも、ループス・コミュニケーションズ斉藤さんのお話が参考になりました。
そもそも初めは、当たり前ですが、パワーは「パワーそのもの」でした。
つまり、腕力、暴力、武力。
そういったものが、世の中を動かす源泉でした。
それが、人類の社会・経済の発展とともに、「お金」が力を持つようになります。
「富」、つまり、「資本」が世の中を動かす原動力になっていったわけです。
そして資本主義社会の成熟と、印刷物やテレビなど、マスメディアの発達と相まって、「知識と情報」が、重要になっていきました。
知識や情報こそが、結局は武力や資本を動かす源泉であることに、改めて気づいたわけです。
そして、インターネットが登場。
知識や情報は、一部の知識層や、マスメディアが独占するものではなく、一般の生活者が主導権を持ってシェアできるものになりました。
さらに、ソーシャルメディアが浸透していくとどうでしょう。
有名な事例があります。知っている方も多いと思いますが、2年ほど前、ユナイテッド航空にギターを壊されたミュージシャンの話です。
米国のデイブ・キャロルというミュージシャンが、ユナイテッド航空を利用中、手荷物として預けたギターを壊されました。
当然、デイブはユナイテッドに対して補償を求めましたが、ユナイテッドは損害賠償基準にあたらないとして、請求に応じませんでした。
そこで、デイブは、泣き寝入りするのではなく、”United Breaks Guitars”というキャンペーンソングを作って、YouTubeにあげたのです。
動画は、一千万回以上も再生され、事態を重くみたユナイテッドが謝罪するということになりました。
これは、何を表しているのでしょうか?
デイブは、売れないミュージシャンです。
飛び抜けた知識や情報を持っているわけでもありません。
しかし、デイブの愛用していたギターが壊されてやりきれないという、「素」で「等身大」の表現に、多くの人々が「共感」したということです。
つまり、ソーシャルメディア時代には、「知識や情報」もさておき、「共感」が世の中を動かす原動力になってきているということです。
腕力も、資本も、知識や情報も持たない、たった一人の男が、人々の「共感」を得ることで、巨大企業を動かしたということなのです。
先週取り上げたオーケストラは、キチンとした音楽教育を受けた知識層が高度な表現を実現し、それを観衆が鑑賞するというものでしょう。
ジャズは、(誤解を恐れずに言うと)正しい音楽教育というよりは、好きで我流でやっているミュージシャンたちの、本人だけがもつ素の感性に、観衆が共感するというものでしょう。
広告でいうと、練り上げられたキャッチコピーもさることながら、消費者の生々しいレビューこそが生活者の共感を生み、人々を動かす原動力になるということ。
ソーシャルメディアはそんな個人のパワーを支え、拡大する強力なツールなんですね。
ちっぽけだと思っていた僕たち一人一人の力。
それが、人々の共感を獲得することで、世の中を動かせるなんて、すてきな時代になりましたよね。
今日は、これくらいで。(^^