チリ鉱山救出劇にみる「関心化」のプロセス

ここ何週間か、仕事にプライベートにすごく忙しくって、参ってます。。。

でも先週は、出版社との打ち合わせで、今進めている原稿が「なかなかいいですね」とほめられて、なんとかモチベーションを保っていたりとか。

そんな中でも、チリのサンホセ鉱山落盤事故での救出劇には、とっても関心を持ち、最初の救出者のアバロスさんが出てきた瞬間をUstreamで見たときには、思わずバンザイをしてしまいました。

京井良彦の「3分間ビジネス・スクール」-チリ鉱山

しかし、なぜこんなに忙しいにも関わらず、地球の裏側で起きていることに関心を持ち、自分事のように思ってしまったのでしょうか?

林信行さんの著書「iPhoneとツイッターはなぜ成功したか」によると、人が、ある情報を自分事として関心をもつにあたり、3つの軸があるといいます。

それは、「時間軸」と、「親密軸」と、「空間軸」とのこと。

●時間軸

これは、つまり新しいニュースほど価値があるということです。

もし野球ファンであっても、昨日行われた野球の試合の再放送よりも、今テレビで生中継されている注目選手が出場するフィギュアスケートの方に興味を持たないかということです。

ニュースも昨日起きた事件より、今まさに起こっている事件の方が誰しも気になる。

この鮮度という価値は、ツイッターの普及によって、ほぼリアルタイム価値と同意になり、ますます加速しているようなのです。

●親密軸

これは、感覚的に分かると思います。

つまり、誰か分からない人の情報より、友人や家族の情報の方が、関心があるということです。

これは、つまりFacebookがいう、ソーシャルグラフの価値と同意でしょう。

食べログなどで、知らない人がコメントしている情報より、価値観が同じで顔の見える友人からのレコメンド情報の方が信頼できる。関心を持てるということです。

●空間軸

これは、自分と対象との物理的距離がどれだけ離れているかということです。

外国で暴動が起こっていると聞いて、「へー」としか思わなくても、近所で火事があったら「ナニ!?」と関心を持つ。

物理的な距離によって、ニュースバリューが変わるのは、ある意味当然のことです。

という3つの軸がポイントなのですが、ここで考えたいのは、「なぜチリという地球の反対側の出来事が自分事のように感じたのか?」ということ。(地球という球体で考えると地下にいた方が物理的には近かったと言えますよね、という意地悪な発想)

実は今進めている原稿でも取り上げているのですが、僕の説は、「グローバル化」と、「豊かになったこと」と、「ソーシャルメディアの浸透」が、僕たち生活者の欲求を、より人間的で社会的なものにしているのではないかというものです。

僕たち生活者の欲求は、人間の一番深いところにある「社会性」や「環境保持」、「公正さ」や「正義」なんかに向かっているのではないでしょうか。

最近、広告の世界でも多くみられる「社会貢献キャンペーン」的なものも、決して一過性の流行りではなく、「社会全体がそっちの方向に向かっている」ということだと思うのです。

とがいいながらも、地球の裏側での33名の救出劇を見守る自分に、「おまえそんなに人間味のある奴だったか?」と、自らツッコミを入れてしまうのでした。(^^;

iPhoneとツイッターは、なぜ成功したのか?/林 信行