最近、仕事の場で、「どう思う?」という問いかけがキッカケで、ギクシャクしたことがあったのですが、山崎将志さんの新刊「残念な人の仕事の習慣」に、同じ問題が取り上げられていました。
- 残念な人の仕事の習慣 (アスコムBOOKS)/山崎将志
- ここに紹介されているエピソードは、化粧品会社につとめるM君という人が語ったものです。
商品企画会議の場で、試作品を前にして、部長から質問されたと言います。
「M君、どう思う?」
M君は答えました。
「私は、A案がいいと思います。自分ならA案の商品を買います」
答えたM君に対し、部長は激怒したと言います。
「おまえの意見など聞いてないわい!!」
M君は納得いかなかったでしょう。「聞かれたから、答えたのに」と。
これは、「どう思う?」という問いかけが生んだ、コミュニケーションミスです。
部長は、つまり「キミならどうするか、という個人的な意見ではなく、キミはマーケットをどう見ていて、その仮説の中で、この商品がどう受け止められると考えるのかを話せ」ということを聞いていたのでしょう。
実はこの状況、僕の仕事現場でも、よくあるのです。
たとえば、クライアントへの提案に向けた打ち合わせに、クリエーティブがテレビCMの企画を持ってきます。
当然クリエーティブ担当は、「どう?」と聞きます。
そこで、若い営業担当だと、「いいですね!めっちゃおもしろいですよ!」と答えたりする。
当然ここで、「イヤ、別にお前の感想、聞いてねーし!」となります。
で、若い担当は、ポカンとなってしまいます。
クリエーティブは、ターゲットとして設定した生活者に伝えようと、このCMを企画した。
営業担当は、それがクライアントの意向にそっているかどうかを確認し、提案に値するかを判断する。
この若い営業担当は、「クライアントの意向としてどう思うか?」を聞かれたのに、「自分の感想」を言ってしまったのです。
仕事ができる人と言うのは、「どう思う?」という質問に対し、「この人は何を聞きたいのだろう?」「どういう言い方をすれば喜ばれるだろう?」ということを瞬時に察知して答えます。
そういった中で、この質問に対するひとつの対策が自ら「前提条件」を持ちだすことです。
「私の個人的な意見でいえば・・・」
「ターゲットの20代の男性の立場からすると・・・」
「クライアントのA部長は、社長からこう言われている立場なので・・・」
この質問に対する、攻略法として覚えておきたいですね。
しかし、同書でも紹介されていますが、この質問の難しいのは、「オレがいいと思っている方を当てろ」的な状況があること。部長がA案がいいと思っているのに、部下が「B案がいいと思います」と答えて、「おまえ、センスないな!」とバカにするという状況です。
やっぱり、「どう思う?」という質問自体が、効率が悪いということでしょう。
実際、僕も、「どう思う?」と聞かれると、「どうって、どういうことよ?」と聞き返したくなります。
勝手にこちらで前提を持ち出しても、ピントを外す可能性も大きいです。
要するに、この質問には時間の無駄が多いのです。
こうなると、そもそも、「どう思う?」と質問することがよくないということになります。
答えるべき内容が明確でない限り、お互いのために、ビジネスの場でこの質問を使用することをやめるべきということになりますね。
同書には、余談として、日米の野球のヒーローインタビューがあげられています。
日本のプロ野球の場合、
「あの場面でのホームラン! 今の気持ちは?」
「いやあ、やったーって気分です。ファンの皆様のおかげです!」
というような感じです。
しかし、アメリカのメジャーリーグや、僕の好きなボクシングでもそうですが、インタビュアーはゲームが動いたときに、「何を考えていたか?」を聞くことが多いようです。
「What were you thinking, at that time?」
聞かれた選手は、その状況に関する自分の解釈と、選択した行動の背景にある考え方を説明するのです。
インタビューひとつとってもこれだけの違いがあると、「コミュニケーション」のレベルについて、そしてその中で「考える」ということについて、差は開く一方だなあと、思ってしまいます・・・
さて、みなさん、「どう思います?」(笑)