【キューバの旅#2】二重通貨制、配給制度、職業選択・・・ガイドブックにないキューバ

前回は「観光地キューバ」としての見所を凝縮して紹介しました。
【キューバの旅#1】:弾丸キューバ:チェゲバラからヘミングウェイを1日で周る方法

でも僕が本当に見たかったのは、独自の社会事情をもつ現地の人たちの生活です。

二重通貨制をどう捉えているのか?
配給制度はどう回っているのか?
職業選択の自由がない人生に満足なのか?
競争や豊かさに興味はないのか?

滞在時間が短くて十分な切り込みはできなかったけど、少しは垣間見ることができました。
そんな、たぶん旅行ガイドブックにはない情報をまとめておきます。

1. 二重通貨制の限界?

キューバは二重通貨制をしいています。
流通しているお金が、外国人が使う「兌換ペソ=CUC」とキューバ国民が使う「人民ペソ=CUP」の2種類あるのです。

1CUC=1USDと固定されているので、僕が滞在していた2018年12月末時点では日本円で約110円。
1CUP=約1/25CUCのレートで、日本円で約4.4円。

これがややこしい。
観光客でも地元の人が使っている屋台や市場に行くと、CUP価格の激安でモノが買えます。
ピザが20円とか、そんな感じです。
でもおつりが25CUPのときに、1CUCで返してくれたりします。
こんなときも、一瞬???となります。

ただ観光客がCUPを使うのは、本当はやっちゃいけないことです。
為替格差で外国人にモノが買い占められると、本来必要としている現地の人にモノが行き届かなくなります。
あたりまえですが、二重通貨制はキューバ国民の生活を守るためにあるのです。

ただタクシーやレストランにCUCで払う時も「この人たちは自分が使うわけではない高額通貨を触っているけど、精神的にどうなんだろう?」と勝手に心配していました。
キューバ政府は将来、2つの通貨を統合していくと発表していますが、25倍もの格差をどうやって埋めていくか、興味があります。

僕たち外国人からすると、統合前に貯金を全額CUPに換えて、キューバに富裕層として移住するという選択もありますね。
晩年のヘミングウェイのような生活ができるかも。

ちなみに、3CUC紙幣と3CUP紙幣には、共通してチェゲバラの肖像が描かれています。
しかしご覧の通りCUP紙幣のゲバラの方が、断然かっこいいですよね(上がCUC 下がCUP。コインもある)。

これによって現地の人が「3CUCと3CUPを交換しないか?」と持ちかけてきたり、露店で3CUP紙幣が売られていたりします。
日本の古銭販売店では、1000円以上の値がついています。

3CUPという紙幣が、その25倍以上の価値で取引されるということ自体、お金の価値ってなんだろうと考えさせられますね。

2. 配給制度は日本にも来るか?

キューバには配給制度があります。
配給手帳をもらって、パン、野菜、肉、卵などの食料をもらう仕組みです。

キューバが中南米の国のなかでも治安が良いのは、国が生活保障をしていて、ホームレスなどがいないからです。(ちなみに医療費も大学までの授業料も無料で、中南米の中でも最も教育水準が高いと言われています)

この配給所に人々が並んでいるところを見ることができました。

配給制度と聞くと、なにか遠い貧しい国の話のように聞こえますが、日本でもこれと同様の制度の導入が検討されています。

「ベーシックインカム制度」です。

最低限の生活が保障されると、人々は食うためにイヤイヤやる仕事から解放され、本当に自分が価値をおく仕事や活動ができるようになります。

若手のお笑い芸人たちには、年収の高い先輩芸人から食事をおごってもらいながら夢を追いかける習慣があります。
これと同じような仕組みを、社会的に導入するのがベーシックインカム制度といえます。

僕はこういった制度がある方が、人それぞれの才能を伸ばしやすく、社会全体で価値を最大化させる可能性があると考えています。

キューバの人たちが、決して裕福ではないけれど、絵を売ったり、音楽を演奏したり、楽しそうに談笑したりしているときに、なんとも幸せそうな笑顔を見せるのは、そんなことに関係しているのかなとも思いました。

3. 職業選択の自由で考える「自由」とは何か?

人々の職業は、政府によってサービス、公益、農業、鉱業、貿易、製造などに振り分けられます。
つまり、全員が公務員ということで、あまり自由はありません。

月収はスキルに関係なく、平均して740CUP(2016年キューバ政府発表)。日本円で3000円程度です。
その代わり、配給があり、医療費も学費も税金もないわけです。

さて、それを良いと考えるかどうか。
競争がないことを平等で幸せだと思えるかどうか。

人だって動物だから、潜在的には競争本能を持っているものです。
キューバの人でも、世界で戦いたいと考えているスポーツ選手は、アメリカに亡命して活躍しています。

競争の結果、求めるものは、がんばった分だけの豊かさでしょう。
僕は自分が資本主義の価値観に毒されすぎているかな、と思いつつキューバを訪ねたわけですが、でもさすがに今から社会主義的な幸せを享受するのも無理かな、とも思いました。

オードリー若林正恭さんのキューバ旅行記では、東京に戻ったときの気持ちがこんなふうに書かれていました。

この街で誰にもバカにされずに生きるにはいくつ手に入れればいい?
仕事ができて。お金を持っていて。ルックスが良くて。若くて。恋人がいて。もしくは、結婚していて。子供がいて。ファッションセンスが良くて。頭が良くて。デブじゃなくて。
キリがない。
ぼくはとっくに降りている。

それでも、東京で生活する理由をこう述べています。

白々しさの連続の中で、競争関係を超えて、仕事の関係を超えて、血を通わせた人たちが、この街で生活しているからだ。(中略)
そうか、キューバに行ったのではなく、東京に色を与えにいったのか。

行き過ぎた資本主義によって実現する、5%の勝ち組だけが幸せな社会は、95%の人にとってあまり望みたくない社会です。
かといって、職業の自由や人生の選択肢がない世界が幸せだとは思えない。

つまらない言い方ですが、やはり競争も豊かさも、ほどほどのバランスが大事だということでしょうか。

そして今の日本においては、あまり周りを気にせず、気楽に自分の好きなことをやっていこう、ということが正解なのかなと思いました。

キューバはアメリカ国交回復で急激に観光客が増えています。
国に申請すれば税金を払ってプライベートのビジネスができるようにもなりました。
これから、不動産、ホテル、民泊などのビジネスで成功し、富裕層になる人たちも増えてくるでしょう。

今回、ギリギリその前のキューバの姿を観れたのは、本当にいい体験でした。

ちなみに若林さんの旅行記のタイトルにもなっている「野良犬」ですが、本当に道のあちこちで寝ている姿を見せてくれます。
確かに犬だけは、日本よりキューバでの方が自由を謳歌してるように見えました。