カンヌライオンズ2012 レポート③

早いもので、カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバル2012が終了して一週間。
忘れないうちに、まとめておこうと思います。

カンヌが「広告祭」という名称をやめて2年目となりましたが、とにかくもう、僕ら日本のエージェンシーが考えている次元の、相当な先をいっているように思えました。
広告(あえて広告と言いますが)というものが向かうビジョンや哲学、想定する領域やその手法までも圧倒的に違うように感じました。

新生カンヌが目指しているもの、そして評価しようとしているものを、僕なりに勝手に解釈すると次の3つがあるかなと思いました。

①ストーリーとしてのコミュニケーション戦略
②ソーシューションとしてのクリエイティビティ
③テクノロジーによるアイデアの実現

まずは、なんといっても①です。
たとえば、由緒あるフィルム部門でグランプリを穫ったのは、米国のChipotleというメキシカン料理チェーンのミュージックビデオ、 “Back to the start”でした。(新設されたブランデッドコンテンツ&エンターテインメントとの2冠なのです)
カントリーミュージシャン、ウィリーネルソンの歌をバックに農家の主人公が、大量生産的な食肉出荷のあり方に疑問を持ち、あるべき姿に改心していくというアニメです。

これだけ見ても、なぜフィルムのグランプリなのか?なぜブランデッド~のグランプリなのか?理解は出来ません。
ここには、家畜と人間のエコサイクル、その持続的なあり方、そこに生活者みんなの共感を獲得して本気で向かっていくというストーリーが、まずあるのです。
「これをこうして、ああして、こうなるから世の中がよくなり、人がハッピーになる」という具合に。
それを実現するために、あらゆるメディアでそのストーリーをサポートするように設計されています。

たとえば、このウィリーネルソンの楽曲をiTunesで買うと、Chipotleの契約農場の環境整備に寄付されるようになっています。
こういったように、まず世の中をよくする方向へのストーリーがあって、そのためのコミュニケーション戦略がアイデアをもって組まれているという感じがしました。
(まあ、いわば日本で言うコミュニケーション・デザインの上流概念なんでしょうけど)

②のソリューションとしてのクリエイティビティは、前回エントリーでも書きました。
広告表現ではなく、ビジネスの本質的な課題解決に向けて、広告以外のアイデアを研究して取り込んでいこうという意思です。

③のテクノロジーによるアイデアの実現も、前回、Google×コカコーラの事例で少し述べました。
これまでは、メッセージを大衆に向けて発信するという、いわゆる旧来型の広告手法だったものが、実はテクノロジーの進化で、個々をダイレクトにつなげることが可能になっているのです。
そういったアイデアを形にすることが、評価されているようでした。

ホンダのインターナビ”Connecting Lifelines”もそうです。
これは、震災後むちゃくちゃになった道路を、ホンダのカーナビを積んだ車が走っている情報を逆に収集し、新しい道路地図として公開していったという施策です。
これは、チタニウムライオン(準グランプリ)を受賞しましたが、日本のキャンペーンが、革新的施策を評価するチタニウムを獲得するのは、ホント快挙なんですよ。

とにかくまずは、企業やブランドが世の中を良くするために、どういうストーリーを描くかが問われていました。
そして、広告はそれを実現するために、どのようなクリエイティビティを発揮し、それを現代のテクノロジーでどう実現できるのか、ということが問われているようでした。

最後に、僕が今回の受賞作で一番心に刺さったものを紹介します。
韓国サムソンのデジタルカメラのプロモーション、”INsight”です。
これは、目の見えない子供たちにデジタルカメラを渡し、自然の手触りや音などを感じながらシャッターを切ってもらうもの。
撮影された写真は手で触れるように樹脂で立体化された上で、その展示会が開催されました。
このキャンペーンには、いくつかのメッセージが登場します。
「視覚は、世の中を理解する方法の一つでしかない」
「心の目を開こう」など。
ここにも、サムソンが目指すストーリー、それを実現するクリエイティビティ、テクノロジーが、盛り込まれています。

今回も、いろいろ学ばせていただいたカンヌ。
ホントは、まだまだ、いーっぱい、話したいことがあります。
で、それは8/29の宣伝会議のセミナーで、お話させて頂くことになりました。
そこで、いろいろと深いお話できればと思っていますので、お楽しみに。

ということで、長くなりましたが、今日はこのへんで。